『もっと、カボワン・スポーツ!』代表KODAIRAの商品開発への想いなどを綴ったスペシャルコラム
デュアルウイング開発秘話
答えは、「空気」を味方にするための知識をカタチにすること。とはいえ、空気って見えないですよね。だけど地球上を乗り物で移動するときには必ずこの空気を掻きわけて行きますから、無視はできない内容なのですが、なかなか実感がわかないから軽視しがちなのが実際だと思います。
C-HRの前に発売した通称50プリウスもこのC-HRもトヨタが空力面も考えて開発していると豪語してましたが、それで完璧な空力マシンなのかといえば、メーカーオプションでスタビライジングフィンが設定されているようにやった方が良いことは沢山あります。
話をウイングのデッサンに戻すと、このデッサンも当初納車前は、バックパネルの上に乗せたウイングの足を後ろ側まで延長させることで後ろ向きに留まった鷹が爪をひっかけているようなデザインを書いてました。C-HRが納車されて、いざバックパネルを見ると純正のフラップを見てもわかるように、奥行きが10センチ程度、機能面を発揮させたい形状のウイングをあそこに乗せるにはあまりにも
面積が少なく、おまけにバックパネル自体が樹脂であった為、穴を開けてそこにとめるには高速域での強度不足の心配から大きな課題が生まれました。工場で悩みました。一度動き始めた開発ですからまずフロントは手を付けた方が良いと粘土を手に取り、デザイン画に沿いイメージ造りをはじめた何時間後、唐突に閃きました。視点の変化です。
「点で考えるからあぶないんだ。だったらバックパネルごとウイングにしちゃえばいい。」
ここからが、3次元だからこそ生まれたおそらく業界初のバックパネルごと一体化する、その上にウイングを乗せたスタイルの新しいウイングのスタイル。しかし、処女作ですから四苦八苦です。ウイングでありがちな性能を半減させてしまう事は、とめた箇所の鉄板らが高速走行中に歪んだり、ウイングで受けた力を受け止めきれずに力が逃げてしまう事です。これを回避するために確実にボディに伝える。その為には純正ピン位置を利用したボルトナットを使用した固定での強度出し。10か所を超える固定ならば可能になると確信しました。ここでデュアルウイングの大元の案が誕生しました。
大元の案が出来れば、もとのデザインを実現していくだけになりますから、足になる支柱、そして
ウイングの制作を行っていきました。当初デザイン画では、ウイングはストレートタイプでしたが急遽、C-HRのバンパー形状に合わせ弧を描いた形状で制作。そして、支柱は支柱間を通る風を清流するために平面を作成し平行にして、遊び心として支柱外側の形をひし形に近い形状にしてC-HRのテーママークであるダイヤモンドを採り入れた形状支柱をしました。
一般的には、知られませんがFRP製品の制作として、特にウイングのフラップは1枚の板から起こし制作していきます。現代では、エアロパーツは片側だけ造形をして3D測定によるデータ化した制作方法が増えてますが、完全均一で作り出すものとまた印象が一味違う人が作り出した造形物の世界感がこの製作にはあります。僕もこの人が作る魂が込められている造形物がとても好きです。
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